第一章 誰も帰さない
十三
凪
怪物が消え戦いが終わったあとも、CICには奇妙な沈黙が残っていた。
その静けさの中で、最初に動いたのはセラフたちだった。
ざわめきが、さざ波のように広がっていく。コンソールに着いていた者も、通路に控えていた者も、皆が一斉に一点を見ていた。ツクヨミの首元を。
ミナトもつられて見た。
誓約封を解いた直後に落ちた、あの鎖。ツクヨミの首には首輪だけが残り、ずっと垂れていた鎖は、もうない。
最初の一人が、口元を押さえた。次の一人が、目を潤ませる。声にならない声が、CICのあちこちで漏れた。
「……鎖が」
「外れて、おられる」
「ツクヨミ様の、あの鎖が……」
ミナトにはまだ、その重みが分からなかった。重そうな首輪の鎖が一本外れた。それだけのことに見えた。だがセラフたちの様子は、明らかにそれだけではなかった。涙ぐむ者さえいる。
ツクヨミ自身は、自分の首元に手をやったまま、立ち尽くしていた。
「……取れた、のか」
幼い子供が信じられないものを見たような、頼りない声だった。
「これは……外せぬ、はずじゃった。わしにも、誰にも」
その目が、ミナトを見た。
何かを言いかけて、けれど言葉にならない。ただ見開いた銀色の瞳が揺れている。
ミナトは何が起きたのか、半分も分かっていなかった。誓約封を解いた副産物として、鎖が落ちた。それだけだ。
だがツクヨミとセラフたちの様子が、それが「それだけ」ではないと教えてくれた。
ダスラがつかつかと、歩み寄ってきた。
そして何も言わず、ミナトの頭を自分の胸へ抱き寄せた。
「……ありがとう」
静かな声だった。それきり何も言わない。背中に回された腕にこもった力だけが、言葉にされなかったものを伝えていた。
いつも隙のないこの人が、初めて見せた素顔だった。
ふと視界の端で、エティンがこちらを見ていた。
いつもの微笑みは崩れていない。だが、ダスラの腕が離れるまで、その青い瞳だけがじっとミナトへ向けられていた。
ダスラが腕を離す。もういつもの澄ました顔に戻っていた。
「……忘れてくださいまし」
それだけは、少し早口だった。
CICを出る通路で、エティンがミナトの隣に並んだ。
戦闘で金色に灯っていた瞳は、もう穏やかな青に戻っている。
「驚かれましたか」
「……俺には、よく分からなくて。鎖が、一本外れただけ、にしか」
「ええ。皆様から見れば、それだけのことだと思います」
エティンは静かに微笑んだ。
「しかし、わたくしどもが目覚めたときから、あの鎖はツクヨミ様の首にございました。何度外そうとしても、誰の手でも動かせなかった。ツクヨミ様ご自身にも」
その声がわずかに揺れた。
「外れる日が来るなどと、思っておりませんでした。それを、ミナト様が」
エティンはそこで言葉を切り、ただ深く、深く頭を下げた。その細い肩は僅かに震えていた。
礼の言葉より、その一礼のほうが重かった。
◇
戦いの翌日、海は嘘のように凪いでいた。
あの海域は、すでに水平線の遥か向こうにある。光の柱が海面を抉り、白い蒸気の壁が立ち込めた場所には、原因の知れない異変を調べに、やがて船や航空機が集まってくるだろう。コクヨウは夜のうちに、静かに現場を離れていた。
今、船を囲む朝の海は、昨日の全てが夢だったかのように、光を映してただ揺れているだけだ。
コクヨウも豪華客船の姿に戻っている。シャンデリアは元の位置に降り、大理石は床へ戻り、遊技室の筐体は一台も欠けずに並んでいた。
ただミナトには分かった。
糸の向こうで、船はまだ痛んでいる。船体側面には赤黒い熱傷の痕が残り、上部構造には裂けた装甲の修復痕が走っている。何より――昨日、槍を作るために削り取った胴の一部が、まだ欠けたままだ。その欠落を船は今、こつこつと埋めようとしている。海の中から、何かを拾い集めるように。
ミナトがまず向かったのは、医務区画だった。
昨日の被弾で傷を負ったセラフは、五人。うち二人が骨折、残りは軽傷。コクヨウが寸前に防護壁を展開したため、命に関わる傷を負った者はいなかった。
ダスラの治療を受けた彼女たちは、もう寝台を抜け出して、廊下を歩き回れるほどに回復していた。包帯を巻いた腕で、早くも次の持ち場の算段をしている者までいる。
その輪の中心にツクヨミがいた。
ミナトが入っていくと、寝台を整えていたダスラが小声で言った。
「戦いが終わってから、ずっとですわ」
「ずっと?」
「ツクヨミ様は、真っ先に倒れた子たちのもとへ駆けつけました。治療が終わったあとも、一晩、医務区画を離れようとなさらなかった」
ダスラの声には自分の主を見守る、静かな響きだけがあった。
ミナトはツクヨミを見た。一人ひとりの寝台を回り、傷の具合を確かめている。表情はいつものように読めない。だが糸の向こうで、彼女が自分を責めているのが分かった。
「……すまなかった」
骨折した一人の前で、ツクヨミは小さく頭を下げた。
「わしが、もっと早く誓約封を解いておれば。お主らを、傷つけずに済んだ」
寝台のセラフは、目を丸くして慌てて首を振った。
「とんでもございません、ツクヨミ様」
包帯の腕で彼女はむしろ、ツクヨミの手を取ろうとする。
「私どもより、ツクヨミ様がご無事で。それが、何よりでございました。骨の一本くらい、すぐにくっつきます」
他の四人も口々に頷いた。誰一人ツクヨミを責めない。それどころか傷ついた身で、主の身を案じている。
その忠義が、かえってツクヨミを苦しめているようだった。守ろうとした相手に逆に気遣われる。誓約封を破ってまで守った仲間が、現に骨を折っている。そのどちらもが彼女の中で、静かに澱んでいくのが、ミナトには伝わってきた。
ツクヨミはそれ以上は何も言わず、一人ずつの寝台を最後まで回りきった。
◇
甲板で熱傷の痕を眺めていた佐紺の隣に、いつの間にかニサバが立っていた。
「海水から、金属元素や鉱物成分を集めているのです。水に溶けたものだけでなく、漂う微細な粒子まで濾し取って、自分の身体へ組み直しているのです」
「海の底から直接取るほうが、早くはないのですか」
佐紺が訊いた。熱で波打った装甲へ目を向けたままだった。
「ええ。深い海の底には、鉄も、稀少な金属も、粒のまま眠っています。ですが、潜るには外殻の完全な気密と耐圧が要ります。昨日の傷を抱えた今のこの船では、潜れません」
「では、採取用の装置を海底まで降ろすのは」
「その装置を、どこから削り出すのです」
ニサバは、静かに首を振った。
「数千メートルへ届く腕を作る質量も、今は身体の一部です。それに、底を漁るには船を停めねばなりません。昨日の敵の同類が、まだどこにいるか分からない海の上で――動かぬ船は、狙いやすい的になります」
「……走りながら集められるのは、海水だけ、というわけですか」
「はい。幸い、航行そのものが濾過になります。前へ進むかぎり、水は勝手に流れ込んでくれますので」
「では、当面は本調子ではない、と」
「ええ。ですので――修復対象区画の優先順位を、組み直したいのです。西園寺様のお力を、お借りできますか」
ニサバが差し出したのは、分厚い図面の束だった。
佐紺の表情が、わずかにほどけた。
「私の領分です。喜んで」
二人は甲板の隅に図面を広げ、額を寄せて優先順位を詰め始めた。客室区画の補助系統は後回しでよい。いや、人命に関わる医務区画と空調が先だ。ならば様式第三号で申請を――傍から聞けば素っ気ない応酬だが、本人たちの声には、妙な張りがあった。
「西園寺様」
ニサバが、ふと手を止めた。
「昨日、私が緊急時特例でお連れしたとはいえ――まさか、あの状況で、独力で配電盤を繋ぎ切られるとは思いませんでした」
「配電盤の前に、誰もいなかったので。やるしかありませんでした」
「……私が監督として同行したとはいえ、工事担当者一名だけでの復旧作業は、本来の規定では認められておりません」
ニサバは眼鏡の位置を直した。それが動揺を隠す癖だと、佐紺はもう気づき始めている。
「ですが。あのとき貴方が灯してくださった電力で、皆が戦えました。規定に書けない働きでした」
「規定に書けないことを、する。それも、たまには」
「……たまには、です」
ニサバがわずかに口元を緩めた。図面の上で二人の指が、同じ区画を指していた。
◇
午後、遊技室のPCコーナーの隣に、朱音の笑い声が響いていた。
昨日、初めて実戦で照準を握った朱音は、興奮が抜けきらないらしい。FPSの筐体の前で、身振り手振りでダスラに昨日の一射を再現している。
「あんときな、敵が上に逃げる線が、ぶわって枝分かれして見えてん。で、いっちゃん太い線に、槍の弾道、かぶせて――どん!や」
「ええ。見事な置き撃ちでしたわ」
ダスラは腕を組み、満足げに頷く。
「あの距離、あの速度で、回避先を一本に絞るなど。並の射手には、できませんの」
「やろ? いやー、リンクしてるときの感覚、やばかったわ。兵装が全部、ゲームのパラメータで見えてんねん。あれ、ずるいやろ」
「私が訳しましたからね」
ダスラは胸を張りかけ――それから、ふっと表情を和らげた。
「ですが、訳したところで、当てるのは貴女ですわ。あれは、貴女の腕です」
朱音がきょとんとした。それから照れ隠しのように笑う。
「……ダスラさん、最初めっちゃ怖かったのに。今、めっちゃ褒めるやん」
「最初は、あなた方は客人でしたから。今は」
ダスラは小さく笑った。
「同じ戦場に立つ、戦友ですもの」
朱音はその言葉を、少し噛みしめるように聞いていた。
昨日、自分は確かに何かを終わらせた。その手応えを分かち合える相手が隣にいる。それが悪くなかった。
ふと朱音は声を落とした。
「……ツクヨミちゃんの首の鎖、取れたんやな」
「ええ」
「よかったわ。ほんま」
それから朱音は少しだけ眉を寄せた。
「……でも、首輪のほうは、まだ残っとるんやな」
「……ええ」
ダスラは静かに頷いた。
それ以上は、答えなかった。
二人は、しばらく黙っていた。
◇
ミナトはエティンを探していた。
昨日、誓約封の奔流を肩代わりし続けたあの手の、指先の冷たさがずっと気になっていた。
給湯室でエティンは一人、湯気の立つカップを両手で包んでいた。いつもの微笑みで振り返る。
「ミナト様。いかがなさいました」
「いや……手は、もう大丈夫かと思って」
エティンは少しだけ目を見開き、それから柔らかく笑った。
「お気遣い、ありがとうございます。お恥ずかしいところをお見せしました」
「恥ずかしいことなんて、何も。俺が受けきれないものを、あなたが受け止めて、訳してくれたんでしょう」
エティンはカップの湯気に目を落とした。
「誓約封の原文に深く触れるほど、訳す側の負担は増します。誓約封の言葉は、この船でいちばん深い場所のもの。ですから、いちばん、応えます」
「ダスラさんは、平気そうでした」
「ダスラは、丈夫なのです」
エティンは少し笑った。
「あの子が訳すのは、武装の管制。深いけれど、誓約封ほどではない。それに、もともと、私より頑丈にできているのです。私はどちらかというと――意外と、器用なだけで」
器用、という言葉で、エティンは自分の消耗をさらりと畳んでしまった。だがカップを包む指先は、まだうっすらと白い。無理をこうして笑顔の下に仕舞うのが、この人の癖なのだと、ミナトは思った。
「……今度から、無理なときは、言ってください」
ミナトは言った。
「あなたが倒れたら、俺は深いところで、帰り道を失う。あなたは、俺の命綱だ」
「あら」
エティンはいたずらっぽく目を細めた。
「命綱に、休めと仰るのですか」
「綱だって、切れたら困ります」
エティンは声を立てて笑った。湯気の向こうの笑顔から、ようやく無理の影が抜けた気がした。
◇
その夜ミナトは、甲板でツクヨミを見つけた。
舳先に近い場所に、一人で立っている。海を見ているのではなかった。何もない夜空の、ある一点をじっと見上げている。
声をかける前に糸が、彼女の状態を伝えてきた。
鳴り止んでいないのだ。昨日呑み込んだ欠片の奥から立ち上った、あの歌が。
「……まだ、ここにいたんですか」
ミナトが隣に並ぶと、ツクヨミは振り返らずに言った。
「今は――聴いておるのじゃ」
「あの歌を」
「うむ」
ツクヨミは自分の胸に、軽く手を当てた。
「昨日、あれを呑んでから、分かることが、少しずつ増えておる。思い出した、とは違う。霧の向こうから、切れ端が、勝手に流れてくる」
ミナトは黙って待った。こぼれた声の奥に、一人では抱えきれない寂しさが滲んでいた。
「あの怪物には、名があった。レヴィアタン、と呼ばれておった」
ツクヨミは、夜空の一点を見たまま言う。
「そして、あれは一体ではない。まだ複数、おる。居場所は分からぬ。じゃが、欠片を取り込んで――気配を、感じられるようになった。遠くで、いくつもの、わしと同じものが、息づいておる」
「他にも……」
「うむ。そして、向こうも、わしを感じておる。人の目は欺けても、同じものの目は、欺けぬ」
ツクヨミの声が低くなった。
「戦いの前夜、何もない空に重さがあると言うたじゃろう。あれが、まっすぐここを見つけた理由じゃ。隠れても、また来る」
ミナトは夜空を見上げた。今は何もない。だがいつか、あの一点がまたにじむ。
「わしらは、気が遠くなるほど古い」
ツクヨミは続けた。
「この星がまだ原始の海も持たぬ頃、空から落ちてきたらしい」
ミナトは、言葉を失った。
一万年でも、頭が痺れるほど途方もなかったというのに、地球が生まれてから今日までとは、スケールが大きすぎて全く想像ができない。人の歴史も、文明も、生き物が陸へ上がったことすら、その時間の前では瞬きするほどでもない。
目の前のこの少女が、そんな時間を背負っている。その事実は、もはや現実感を通り越してミナトの理解の枠から完全に外れていた。
「複数の仲間がおって、あるとき、何かの理由で、眠りについた。……なぜ眠ったのかは、分からぬ。なぜその仲間が、人の感情を狩る怪物となって、わしを襲うのかも。肝心なところは、まだ、何も」
そこでツクヨミは、ミナトの方へ顔を向けた。
「じゃが、欠片を取り込んで、もう一つ、はっきりしたことがある」
その目がいつになく、まっすぐだった。
「お主たち三人の持つ、あの稀な性質――わしと繋がれる、あの力じゃ。あれが、前よりずっと、はっきり感じ取れるようになった。わしに感じ取れるということは……同じものたちにも、いずれ、感じ取れるということじゃ」
「……それって」
ミナトの背が、冷えた。
「俺たちは、どこにいても、見つかるってことですか」
「うむ。陸に散って隠れても、いずれは嗅ぎつけられる。一人ずつなら、なおさら危うい」
ツクヨミは、静かに言った。
「じゃが、三人まとめてこの船におれば――わしが、守れる。お主たちの性質を、わしがいちばん近くで感じておれば、異変にも、誰より早く気づける。じゃから、傍に置く。閉じ込めるためではない。それが、今いちばん、お主たちを死なせずに済む道じゃからじゃ」
隠れ続けるための船ではない。狙われ続ける者たちを、最も守れる場所。ミナトはその理屈をゆっくりと飲み込んだ。逃げ場ではなく、盾の内側にいるのだと。
「同類を、撃った」
ツクヨミが、ぽつりと言った。
「初めて会うた同類じゃった。口も、きいてくれなんだ。呼びかけも無視して、撃ってきた。……それを、撃ち落として。今になって、あれにも歌があったと、知った」
その声に初めて、隠しきれない震えがあった。
「あれも、誰かに、ああいう身体へ造り変えられたのではないか。人の感情を狩る側にされたのだとすれば、あやつは、奪う者にされたわしの仲間じゃ。そして、感情を奪われた人間もおる。どちらも、被害者なのかもしれぬ。ならば――本当に奪っておるのは、いったい誰なのじゃ」
ミナトは答えを持っていなかった。
ただ糸の向こうで彼女の歌が、孤独に鳴り続けているのが分かった。
ツクヨミ自身の記憶は、目覚めてからの三年間しかない。
記録の古い領域は大きく欠損し、目覚めてからの三年間にも、同類の姿を直接観測したことはなかった。
自分は、この星にただ一人しかいない。そう信じていた存在が、初めて出会った同類を自分の手で撃った。
その痛みを、共有できる者はこの広い海に、たぶん一人もいない。
いや。
一人だけ、いた。
ミナトはそっと、ツクヨミの隣に、肩を並べたまま立った。
気の利いた言葉は何も出てこない。だから言わなかった。代わりに糸の向こうの歌へ、自分の側からも静かに耳を澄ました。一人で聴くより二人で聴いた方が、ほんの少しだけ軽くなる気がして。
ツクヨミが、ちらりとミナトを見た。
「……お主は、言わぬのじゃな。大丈夫か、とも、可哀想に、とも」
「言ってほしいですか」
「いや」
ツクヨミは、また夜空へ目を戻した。
「黙って隣におる方が……楽じゃ」
二人はしばらく、何も言わずに夜空を見ていた。
やがて、ミナトが戻ろうと背を向けかけたときツクヨミが、ぽつりと言った。
「……ミナト」
「はい」
ツクヨミは、すぐには続けなかった。自分の首元へそっと手をやる。鎖が消え、首輪だけになったそこへ。
「鎖を外してくれたこと……まだ、礼を言うておらなんだな」
「狙ってやったわけじゃありません。俺は、誓約封の第一段を解こうとしただけです」
「分かっておる。鎖が落ちたのは、ついでのようなものじゃろう」
ツクヨミは首輪の下に残る、薄い接続痕を指でなぞった。
「じゃが、わしが目覚めたときには、すでにあれは首から下がっておった。外せぬものだと思うておった。外そうと考えることすら、いつのまにか、やめておったのじゃ」
夜風が、銀色の髪をわずかに揺らす。
「それが、なくなった。お主が来てから、わしの周りで、無理だと思うておったことが、一つずつ……」
言葉が続かなかった。
「……うむ。とにかく、礼を言う。ありがとう、ミナト」
ようやく、それだけ言った。言い慣れない言葉を初めて口の形で確かめるような、たどたどしい礼だった。
ミナトは何と返せばいいか分からず、ただ小さく頷いた。
それで十分だったらしい。
ツクヨミは、ほんの少しだけ表情を緩め、その頭上で、月が、白く冴えていた。
鎖のなくなった首輪を、月の光が、静かに撫でている。
ミナトは、なぜだか、その光から、目を逸らしたくなった。